スマホアプリ「Miitomo(ミートモ)」を遊んでみて、改めて『仕組みを作る会社』としての任天堂を実感したって話
任天堂とDeNAとの提携が発表され、ちょうど1年経過した2016年3月17日。任天堂製スマートフォン向けアプリ「Miitomo(ミートモ)」が配信開始された。
本アプリをしばらく弄って自分は改めて「任天堂は仕組みを作るのが上手い」と感じた。その理由について、今回は過去に任天堂が手掛けた数々のソフトや、今回のアプリに実装されてる「仕組み」に着目してぼんやり語っていきたいと思った。
まずMiitomoについて
Miitomoとは?
Miiを媒介にした質問合戦
本作はMiiとの会話という形式で質問を回答するソフトとなっており、吹き出しをタップすると誰かの質問の回答を聞くことが出来て、Mii本人(?)をタップすると自分に対しての質問が投げかけられる。
そして質問の回答に対して「いいね!」や返信が付くことでより深く質問合戦を楽しむことが出来るように作られているのだ。
Miiの着せ替え
トモダチコレクションの流れを汲んでいると思われる本アプリはMiiの着せ替え期の海も力を入れており、ショップで要されてる様々な種類の服を組み合わせて自分だけのコーデを作成、自慢することが出来る。
また本ソフト内で実装されてるコリントゲームめいたミニゲームの景品にも、衣装やアイテムが用意されておりどれも物欲を刺激するものばかりであり思わずゲームチケットやコインをつぎ込んでしまう、そしてキャンディーになって戻ってくる。
Miiを用いた写真撮影
スマホアプリならではの機能ということでMiiを用いた画像作成や画像との合成機能は3DSのころに比べて大幅に強化された。Twitterその他のSNSにも共有しやすくできており、可愛らしい活動写真からネタ画像作成まで幅広く活用することが期待できる。
アプリについての概要は紹介したので、次から任天堂が作り出してる「仕組み」に付いて話をしていきたいと思う。
任天堂という「仕組みを作る」会社
仕組みを作るとは?
任天堂の作り出す「仕組み」とは何だろうか?任天堂は新規ソフトやハードを立ち上げたりリリースする際に、ユーザーやプレイヤーの行動に潜在的な影響を与えるような、そういったシステムを実装していると考えている。
今まで任天堂が作り上げてきた「仕組み」の例
Miivarse
任天堂プラットフォームで発売されたソフトそれぞれに掲示板を設置したシステム「Miiverse」
ゲーム内の画像やお絵かきを添付し、文章を書き加えることで掲示板として一歩進んだコミュニケーションツールとして機能している。
最初こそ使い方の模索が行われていたが、最近になってとあるソフト(後述)のおかげで方向性の一つが見えてきており、今後の発展もまだまだ大いに期待できるサービスの一つである。
すれちがい通信
3DSで本格的に実装された機能である「すれちがい通信」。ソフトごとに設定されたちょっとしたデータのやり取りを、外で歩いた際に行うことができるシステムである。
これによりユーザー同士のゲーム内プロフィール交換やお助け機能などが使用できるため、3DSを外へ持ち歩く大きなキッカケを作ることに成功している。
いつの間に交換日記
かつて存在したサービスではあるが「いつの間に交換日記」も画期的な仕組みのひとつだった。便箋を選択しイラストを描き送信するとほかのフレンドの3DSにそのイラストが描かれながら届き、フレンドは追加のページに新たにイラストを描き加えることが出来、いわゆる交換日記のようなゆるくつながるチャット形式のソフトとして一時期大活躍してた。
だが残念ながら出会い系ソフトとして悪用されているのを公式側で抑えきれず、現在やむなくサービス終了してしまっている。頃合いを見て規約やシステムを見直して復活してほしいソフトである。
スプラトゥーン
スプラトゥーンも「仕組み」の結晶体である。特にハイカラシティを中心に、Miiverseを用いた落書き機能を壁のペイントとして適用させ、またインクリング達の発言として噴出されるように設定している。またステージ内にもペイントとして表示され、フェス中にはネオンサインや花火としてもイラストが表示されるのだ。
これによってハイカラシティは超巨大な「大喜利会場」として機能するようになった。
そしてこれに加えイカの特徴のわかりやすい可愛らしさとイラストに御こす際の再現性の高さも備わりこの盛り上がりはゲームの中を飛び越えネット上のSNSにまで広がる勢いとなった。
ネタがミームとなり最終的に文化として歴史に残る、一つの例だろう。
ダル飯スポーツ店
スポーツの手触り、特に球技の心地よさを抽出し醸造した3DSのDLソフト。また、実際の購入金額の値切るやり取りを行うことができる、というのも本作の大きな特徴の一つだった。
値切ることが出来る、というが実際は値切られた値段が本来の値段であり、そこまで到達するまでのやり取りに遊びを取り込むことで「ソフトを購入する過程」をゲームとして昇華した稀有な例であるといえる。
バッジとれーるセンター
3DSのメニューを飾るためのパーツを手に入れるためのソフト、それが「このバッジとれーるセンター」である。本作はほぼ毎週更新されるバッジをクレーンゲーム形式で入手することが可能になるソフトで。手に入れたバッジは3DS版のホーム画面に飾ることが出来る。
ただ追加パーツを発売するのではなくゲーム形式で取得させ、また無料プレイも用意することでユーザーの関心を引き続けて、時にはあざとい(※褒めてる)バッジを用意することで更に盛り上げるという、用意周到な仕組みが備わっている。
3DSのテーマ配信
3DSのホームメニューをBGMごとガラリと変化させ視覚的な楽しさを用意し、販売市場として確立しているテーマ配信も、画期的な仕組みの一種であるといえる。
ハードやジャンル問わず様々なデザインのテーマが発売されている本市場は、3DSにおける遊びの幅を広げた画期的な「仕組み」と呼ぶことが出来ると考えている。
新規ハード事業全般
そもそもの話、任天堂は基本的にハードそのものにひねりを加え、新しい遊びを提案している。
これらは大体の場合新しいデファクトスタンダードや「仕組み」として浸透する事が多い。例えばジャイロやセンサーを用いたモーションコントロール、振動機能、スティックをナチュラルに融合させたコントローラー、タッチスクリーン、十字キー、そしてAmiiboなどなどなどなど。
任天堂は今後も新しい「仕組み」をハードの時点から創り出していくだろう
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素晴らしいデザインは人の潜在的な行動をも変化させてしまう。そして任天堂は仕組みのデザインによってゲームの存在する生活を常に変化させ続けている会社なのだと、自分は考えている。
何より恐ろしいのは「持続力」
例えばバッジとれーるセンターはロンチからもう一年以上経過している。MiiverseはWiiUのロンチからずっと整備や管理を続けている。
任天堂は基本的に「イける」と思ったサービスに対しての力の入れ方が凄まじく、気付いたら当たり前に存在しているという認識をプレイヤーに植え付けるのが上手いのだ。
ネコマリオタイムとかもう一年以上続いてるんだぜ?すげぇよ・・・
Miitomoについて
「よい回答」は「よい質問」から生まれる
本ソフトで投げかけられる回答は「先週末何をしていた?」「最近買ったものは?」といった比較的オーソドックスなものから「最初は好きじゃなかったけど次第に好きになってきたもの」や「一番青春したな・・・という思い出は?」「オススメしたいものを理由含めて教えて!」といった捻りの加わった質問のほか、「あなたにとって友情とは何ですか」といった哲学的な問いなど多岐にわたる質問が用意されている。
本アプリはこの質問のバリエーションの豊富さも大きな特徴となっている。これによって回答を投げかけられるプレイヤーは、しばしば投げかけられる質問に対してついつい考え込んでしまうのだ。
そしてこのバラエティ豊かな質問のおかげで、ストレートだったり変化球だったりするフレンドの様々な切り口の回答を楽しむことが出来るようになっているのだ。
そして既存の質問サービスと大きく異なるのは「質問はすべて任天堂側から提供されている」という点である。これによって所謂出会い系めいた行動を行わせる余地を未然に防いでいるのだと考えられる。
気持ち良い「距離感」
自分は本ソフトで質問しあっている対象は「あなた」ではなく「あなたのそっくりさん」であるように作られている、と遊んでいて思った。
その為、Mii相手なら微妙にずれた回答をしても、寧ろずらした回答がMii特有のゆるい雰囲気とマッチするように出来ているように感じた。なので公序良俗に反しない範囲で面白い回答を投げつけることができるのだ。
質問を「貯める」楽しさ
訪問するとフレンドのMiiと会話を行いそこから質問の回答や、新たに質問を投げかけられる。
この質問を投げかけられるシステム、その場で回答を行わなくても、回答の取り消しではなく「後で答える」という選択肢になっており、マイアンサー部分に質問がたまっていく仕組みになっている。これによって「質問に答えなくちゃ・・・」といった義務感を薄めているのも大変素晴らしいポイントである。
様々なMiiの部屋への訪問や客としてやってきたMii、そして「あなたのそっくりさん」との会話を経て質問がたまっていき、後から「あなた」は好きなものを取捨選択し、回答を考えることができるのだ。
ほかの人の回答を「知る」楽しさ
本アプリは二択の質問にも文章形式での回答欄を用意している、安易に選択肢にしていないのだ。その為「AかBどっち?」という質問に対して「C」や「D」という回答を投げつけることもできるのだ。
これのもたらす効果は地味に大きく、この部分にも大喜利めいた回答をねじ込ますことが可能になるのだ。
絶妙に機能する「読み上げ」システム
何気にスマートフォンのアプリにおいて、文章を自動で読み上げてくれるソフトというのは片手で数えるほども存在しない。そこの部分を任天堂は突いたように思える。
本ソフトの読み上げには(恐らく)トモダチコレクションのシステムを用いており、加えて感情周りその他の特定の単語に対してアプリ内のMiiが固有のアクションや感情表現を行う仕様となっている。
この読み上げ機能、いわゆる「ながら作業」でアプリを起動してる際などに効果的で、常に画面を見続ける必要がないのだ。ゆえにゲームを遊びながら本アプリの回答や質問を聞き、気が向いたら反応したり回答する、ということが可能になっているのだ。
加えて、自動処理だと正確に発言してくれないというシステムの問題点を逆手にとってMii特有の微妙に受け答え出来てるような出来てないような独特のゆる~い雰囲気を醸し出すことに成功しているようにも感じた。
ところでこの感情表現や特定の単語に反応するシステム、多分だけど任天堂の公式LINEアカウントでキノピオ君を特定の単語に反応させてた時の分析データもフィードバックされてるように見えるんだよなぁ・・・
アクセントとしての「着せ替え」
Miiが主役であるため、勿論着せ替えまわりも充実している。
質問を回答することで入手できるコインを使うことで様々なコーディネートが出来るのだが男女共用でしかもバリエーションが豊富なためトモダチコレクションで楽しめた混沌具合を楽しむことが出来るのだ。
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以上の要素が綿密に絡み合うことで機械的になりがちな質問サービスが緩やかなMiiのやり取りとして表示されるので、ユーザーは楽しみながら他者とのコミュニケーションを行うことが出来るようになるのではないか、と自分は遊んでて思った。
雑感
改善してほしいこと
提携したWEBサービスを介した相手の確認
本ソフトはMii同士のやり取りがメインとなっている、そのためMiiであることを生かしより個性的なキャラ作成を行っている人がたくさんいた。これ自体は大変喜ばしいことなのだが、これのおかげで「Miiの向こうにいる相手が、誰が誰だかわからない」というケースがしばしばあった。
なので、登録時に表示されたTwitterのアカウント名とアイコンを表示する機能を後からでもいいから実装してほしいと思った。
全体的な読み込みの間延び具合
本作はMiiを用いてる手前、SNSアプリでは珍しい3Dキャラクターが動き回るアプリデザインとなっている。そのため聊か起動時の読み込みはじめ回答の読み込みの店舗が間延びしているように感じた。
SNSとゲームとをどの部分で折り合いをつけるかを模索した結果にも見えるので何とも言えないが、今後もロードや処理回りの調整を続けていってほしいと感じた。
バイトうさぎ助けてくり~
本作ではミニゲームの景品で服装を入手することが出来るのだが、難易度が尋常じゃなく難しい。バッジとれーるセンターの「お金払ったらほぼアイテムプレゼント」とは真逆のレベルデザインになってるのだ。ここら辺はスマホゲーらしい難易度であるのだがもうちょい緩くしてくれても・・・・いいんじゃないでしょうか(吐血)
ポテンシャルを感じたアプリ
本アプリをしばらく遊んだあとのスマホを閉じている間、回答の反応が着てるか、誰か面白い回答をしているかがウズウズ気になるという症状に陥っている自分に気付いた。
本作がもたらす、反応を得ることでの承認欲求、ゆるく繋がることの出来る安心感、面白い質問や回答を探す中毒性、そして貯まったコインでMiiを着飾る自己満足感、どれも現時点で非常に楽しませてもらっている。
定期的なアップデートや新しい質問の用意、新たな遊びの提案など本アプリのこれからが楽しみである。
■ところで・・・
本アプリを遊んでMii同士のやり取りを眺めたり、Miiを着せ替えしたり、写真撮影することを面白いと感じた人には是非「トモダチコレクション新生活」も遊んでほしいと強く思った。
本作はMiiを次々と作成し、性格を設定しアパートに次々住まわせ、Mii同士のやりとりを眺めたりMiiにおせっかいを出したり後押ししたりなだめたり笑わせたり着替えさせたり食べ物をおごったり一緒に遊んだりするMiiとの生活を楽しむソフトである。
これによって自分と近いようで遠いキャラを配置したり、誰かのそっくりさんを住まわせて別世界での生活を眺めたりと、ほかのソフトには存在しない奇妙な楽しさが備わっているのだ。
Miitomoの配信日に合わせて価格改定を行われた本作。空いた時間にちょくちょく起動するタイプのゲームなので購入する際は「いつも一緒で、なくさない。ダウンロード版」を強く提案しておきます。面白いからみんな買おうぜ(´・ω・`)