GAME LIFE HACK

ゲーム生活、少し変えてみませんか?

『デモンエクスマキナ』がメックアクションとして最高だったから四の五の言わずメカバトってくれ

それでも「デモエクでメカバトる」は流行らない。 
 
ロボットやメックを操作する、いわゆる「ロボゲー」と呼ばれる類の作品は、突き詰めれば「カッコいいメカをカッコよく操作してカッコよく戦ってカッコよく撃破するかカッコよく倒される」の一点が十全に機能すれば満点のジャンルである。
 
つまるところ仮想世界でロボット遊びが出来てればまず作品としての品質は完成されたも同然で、それはデザインがヒロイックでもリアルでもほぼ確実に必要となる要件である。
 

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そして先日クリアした『デモンエクスマキナ』は、そういった「メカアクションとして実装して欲しかった要素」を粗削りながらもキッチリと押さえてくれた非常に楽しいメック操作ゲームに仕上がっていた。
 
ストーリーモードをクリアした今は試してなかった装備を組み合わせ「俺の作った機体カッコいいじゃん?」と自己満足に浸りつつ、新たなパーツ掘り目的でフリーやマルチに潜り、更にシックリくる機体の構築に勤しんでる最中だ。時折ただ試験場で動かしてるだけで満足している時もある。
 
そして、本作を遊んでいくにあたり浪漫に感じた部分を書き連ねていったら割と長くなったので、一度整理し直してみたら今回の感想記事の骨子が出来上がった方向性としては気になってる方向けににまずは体験版辺り遊ばすよう背中に思い切り蹴りを入れる方向の内容となっている。
 
言うまでもないが自分はフロムゲーの類は全然遊んでない身なので某ハイスピードメカアクションとの比較とかそんな器用なこと出来ないです。いやほんとほんと
 
あとこの記事12000文字くらいあるしそんなん読む暇あったらさっさと体験版DLして遊んできたほうがよい。
 
 

拘りぬかれたメカ表現

 
もんだい:暴走した無人兵器が襲ってきたらどうする?
 
せいかい:人型メカに乗ってたたかう

 

本作『デモンエクスマキナ』は強化外部装甲である「アーセナル」を組み上げ搭乗して、様々な依頼をこなしていくメカアクションゲームだ。
 
そしてメカが主体な作品だけあって挙動の作り込みがどこまでも細かく仕上がっている。
 
都度展開される全身のハッチ、エネルギー表現として発光するスリット部、常に接地される脚部の挙動、砲身の展開開閉ギミック、方向転換や速度変化で時折発生する特殊旋回動作など、おおよそ二足歩行メカで機能して欲しい挙動は一通り実装されている。
 

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そして「デモンエクスマキナ」で嬉しい仕様のひとつに「拠点となるガレージ部分で歩き回ることが出来る」という部分がある。本作では中のパイロットとして自分の機体を見上げることが出来るのだ。

 
大まかな流れである「機体を組み上げる → ミッションを受諾する → 目標達成を目指す → 更なる機体改善を模索する」の繰り返しの際、アクセス頻度がいちばん高い出撃メニュー部分を、移動を介する形式で分解したわけなのだが、このひと匙の仕様のおかげでミッションの幕間に毎回「メカに乗り込む感触」を実感出来るようになっている。
 
おかげで乗り込む機体を常に認識できるし、何よりマルチプレイ時には他プレイヤーの機体も同じガレージ内に集結するので素敵性能を重視した機体の見せあいの場としても機能してくれるのがありがたい。
 
これによって、自機に対する思い入れや装備を組み替える実感することが出来、何より浪漫感じる仕上がりになっているのだ。
 

遊ぶロボアニメ

本作の大きな特徴のひとつとして、色彩がクッキリで影がベタ塗り表現された所謂トゥーンシェード表現で作品全体が構築されている部分がある。
 
面白いのが本作はシェーダーこそトゥーンではあるが、メカをはじめとしたポリゴンやテクスチャのディテール密度自体は通常のメックアクションのそれ準拠である事だ。細かいエフェクトに関しても基本的にどれもド派手に表現されているのでちょっとした動作や反応のひとつひとつ迫力満点なものとなっている。
 
そのときキミは美しい。
 
加えて本作の戦闘場面は、そのミッションの数や使用武器や敵の種類、そして作戦領域が多彩に用意されており、様々な「美味しいシチュエーション」にて戦うことが可能となっている。
 

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ミサイルの束を回避しながらミサイルの束で反撃したり、加速モードで翻弄しながら接近しブレードを叩き込んだり、追加ブーストやブリンク機動に翻弄されながら或いは追い縋りながら銃撃したり、一対多での一騎当千からのアーセナル同士の集団戦に、大型機動兵器相手を手玉に取りながら打ち倒すなど一通りの戦闘場面を堪能できる。
 
トゥーンシェードとメカギミックと多彩なシチュエーション、上記二つの要素が合わさった結果まるで「自分の手でロボアニメを動かしている」ような独特のプレイ感覚を味わうことが出来る作品に仕上がっているのだ。
 
(国産タイトルでトゥーンシェードを採用したメカ要素のあるアクションと言えば『エクストルーパーズ』をまず思い出すが。あちらはコミック的な切り口として当該表現を採用しており幕間のカットシーンや操作部分でのエフェクトの方向性、輪郭表現の有無やポリゴンの簡略化具合などで差異を感じることが出来て非常に面白い。
 
 

メックに乗る説得力

2足歩行メカを取り扱う作品でしばしば直面する宿命として「2本の手足が付いている意味はあるのか?」という野暮なツッコミがある。
 
本作『デモンエクスマキナ』ではその問題に対して単純で明快な理由を用意している。特殊能力を持った人間の補助としてパワードスーツを着せて中の人をトレースさせると言う切り口だ。まず中のひとが強力な能力持ちありきでその補助や保護のために人型メカが必要ということで、動きをトレースするパワードスーツ形式で発展したものになっている。なので本作のメカはロボではなくスーツ的な側面が強くなっている。
 

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カットシーンも本作の設定を踏まえて極めて生物的に重心が動き、機敏に攻撃や移動を行う演出がそこかしこに仕込まれているので見ていて大変楽しい。この部分に関しては、昨今の実際に研究されている人型ロボットがより人間らしく動く方向に進化しているので、割と現実からの地続きとして認識できたのが非常に良い。
 

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つまるところ本作は、根幹部分をそれっぽく理由付けすることによって、設定のつじつま合わせが巧いこと成立している作品になっているのだ。
 
一般的なメック作品は少なくとも2本足である部分についての理由付けには成功してるものは往々にして人間型から逸脱したうえであることが多いので、人型に近いプロポーションのメカで説得力を深めてくれた本作の塩梅は極めて好感触だ。
 
単純にアーセナルが強力な人型メカである部分も作中兵器として成立している理由付けになっており、ヘリや戦車が脅威になる程度の人型兵器は、特に現代基準の認識解像度では存在する理由に疑義が生じるリスクがあることは、例えば映像作品でも押井守が悪い方向に吹っ切れてしまった部分からも分かる。
 

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あと作中のキー要素であるフェムト粒子も「この粒子斥力の制御凄いんですよ」的な塩梅に、武器攻撃力増強と機動力増加と攻撃防御を発揮しているので空中浮遊も容易なの事を連想しやすくなっているもそれっぽさの補強に繋がっている。
 
架空メカを扱う作品とは往々にして「ハッタリ」と「それっぽさ」のバランスが重要になるのだが本作『デモンエクスマキナ』はこういったメカ部分の存在理由や説得力の構築が極めて巧く仕上がっており、遊んでいる際も違和を憶えず世界観にのめり込みながら物語を進めることが出来た。
 

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また、メカ描写の説得力強化の一環として、モデリングの調整も非常に丁寧に作られている部分にも触れておきたい。ハンガー画面で眺めまわすことの出来る自機を眺めてても肩部アーマーはちゃんとアーマーとして別パーツとしてモデリングされているし、ポリゴン同士の干渉も殆どの場合において違和感なく調整されていた。
 
奇抜なギミックや武器に工数を費やすのではなく、細かい部分での整合性を突き詰めた説得力の高さのおかげで機体ビューワーモードでの「俺の機体カッコ良くね?」気分が高まるのだ。

切れ味鋭いメカデザイン

加えて本作のコンセプトデザインとして河森正治がかかわっているのも非常に有り難い。氏は今作のデザインに際して、パワードスーツとしてのメカ表現や重要部位として背中と足裏に特に拘ったとのことだ。
 
背中部分の情報密度増やすだけでなく「筋肉に纏わせるような装甲表現」「光る足裏と背骨モールド」を備えることで本作のメカデザインの特徴になっている。
 
これによって地上を走行する際や空中を飛行する際の情報量が高くなり、今どのような機体を操作してどのような状態であるかも把握しやすくなっているのだ。
 

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加えて、普段から得意としている複雑な曲線パーツをパズルのように組み合わせた、有機的な無機物のフォルムからの流麗さと重量感の両立は、今作でも切れ味が鋭く大胆に湾曲し融合するよう装着された頭部パーツのバイザーデザインの職人芸も健在だったのが嬉しかった。
 
はやく国内でも設定画をたんまり掲載したアートブックを何かしらの形式でリリースしてくれ。
 
先に発売されていた『アストラルチェイン』『ファイアーエムブレム風花雪月』のアートブックを読んでいた際にも感じたが、核となるデザインが強固に構築されていると「当該作品のキャラクタとして成立できる勘所の構築」がより確実になるのか、複数人で関わる場合でもデザインの方向性がブレなくなり、一目見た際の作品の特有さがより把握しやすくなるように思えた。
 

整理し直されたアセンブリ周り

本作の操作メカである「アーセナル」のアセンブリ周りは過去の先行作品に準じた「制限内に収まるように装備を組み替えて自分にとって最適な機体を構築する」仕様であるのだが、そのアセンブリ時の装備品周りは抜本的に見直された使用になっている。
 
組み替えることの可能な装備はまず「ヘッド」「ボディ」「プロセッサー」「レッグ」そして「ライトアーム」「レフトアーム」の6種類だ。武装は「右手武器」「左手武器」「肩武器」「エクステンション」「右収納」「左収納」の6種類で、合計12箇所の装備部位を個々に組み替える形式となっている。
 
まず本作の重量と出力枠の制限はコアパーツの「メモリ容量」に集約されている。コアパーツの選択によって機体にかけることの出来る負荷がほぼ完全に決まるようになっているのだ(勿論チップ部分で追加で特徴を変化させる選択肢も残されている)。
 

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ジェネレータやラジエーターが集約されがちだった部分に、走行や機動力そして素敵性能との二律背反が生まれる新しい悩みどころを用意してくれているのが面白かった。
 
あと、本作で特に有難かったのが「右腕と左腕で異なるパーツを装備できる」という部分がある。
 
これによって片方を連射重視、片方を精度重視したり、耐久力を(文字通り)肩代わりしたり格闘や投擲重視の腕部も用意されているし、武器腕を装備するハードルも低くなっているのも非常に大きい。
 
そして何より左右で異なる腕パーツを装備する「不揃いのカッコよさ」も追及することが出来るのは素敵性能的にも強いポイントだ。
 

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このように本作のアセンブリは、基本的には大まかな方針と見た目重視で、エンドコンテンツ攻略時にはカスタマイズを詰める余地があるという、間口の広さと奥の深さを程よく実現出来ているのが非常に好感を持てる仕上がりになっているのだ。
 

多彩なミッション

本作で受注することの出来るミッションは基本的な殲滅系、物資回収、護衛、そして探索系とバリエーション豊富なものが用意されている。
 
特に巨大施設内を移動する類の探索が多いのが好感触で、巨大なトンネル形式だけでなく縦穴を用いた上下に大きく移動させる作りのフィールドデザインが用意されており、ある種の懐かしさを憶える作りになっている。
 

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基本的な殲滅系も程よく射撃感のある浮遊型イモータルや戦車型イモータルが多数出現するので手ごたえのある無双感を実感出来るし、まさか列車護衛系のミッションまで遊べるとは思わなかった。こちらブラックテイル。
 
そして本作のこれらミッションは一部を除きだいたいが難易度が抑えめに設定されており、肌感覚として全体的に操作に慣れた時のサイレントラインくらいのノリで戦うことが出来た。(防衛系の妙な難易度の高さも・・・)この仕様の何が良いかというとつまり素敵性能を重視した好きな武装でも勝てるように作られている。
 
そうはいってもしっかりブリーフィングを聞いておかないと苦戦を強いられる場面も存在するので遊び応えも平均以上に備わって居るのがありがたい。
 

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またストーリーミッションを中心にミッション開始前に他アウター同士の会話が差し挟まれるのだが、ミッション概要の発生経緯の掘り下げや各旅団がどういった理由で参加や辞退を決定するか等のやりとりが幕間に頻繁に行われるので、実際に物語の展開としてストーリーミッションが機能しており極めて楽しむことが出来た。
 
あと個人的に感心したのが「ミッションが連続する場面が存在する」部分だろう。ストーリーミッションの一部では連続してミッションが継続されるパターンが幾つか存在するのだ。
 

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かつて『アーマードコア3 サイレントライン』の発売時に公開されてたトレイラーで「連続ミッションを受注するかを問う通信で〆るPV」が存在したのだが、それ見て当時特にテンション上がった記憶があったのでそういった意味でも本作の連続ミッションには懐かしい気持ちを憶えたりしてた。
 
中盤から終盤にかけて対アーセナル戦が密集しがちでちと冗長に感じたというマイナスポイントは確かにあるのだが、全体として本作のミッションのバリエーションや展開やロケーションの豊富さには大変楽しませてもらった。
 

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あと個人的に好感触を抱いたのが各ミッションの作戦名だ。
 
「砂漠都市奪還作戦」「支配領域侵入アーセナル排除作戦」「中立区域侵入AI殲滅作戦」「先行部隊戦闘データ回収作戦」「生産施設深部再調査」など、漢字密度の高い作戦名がズラッと一覧で並んでいる様子はかつての火星や地下都市で傭兵稼業を行っていた時を思い出し懐かしい気分になった。同一施設を「再調査」の名目で別口から作戦遂行する場面も用意されているのも微笑ましい。
 

周回させる理由付け

本作の装備パーツは殆どの場合、作戦中に撃破したアーセナルから奪う事で増やすのが基本となっている。
 
一応ショップの類も存在するのだが品ぞろえは必要最低限に抑えられているので、所持しているパーツの種類を増やすには戦場でアーセナルを撃破する必要があるのだ。
 

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そして本作の装備の大きな特徴として「スロット穴」が設定されている部分がある。
 
追加効果のあるオプションパーツを部位ごとに装着することでそのパーツの性能を引き伸ばし足り変化させることが可能となっており、この装備品の厳選とスロット穴付きの回収がミッション周回の大きな理由付けに繋がっている。
 
更に出現するアーセナル≒回収できるパーツは作戦ごとに異なるので、殆どのミッションが再度遊ぶ為の動機になっているのは極めて巧い作りであると感じた。
 
また同じミッションをプレイしていてもランダムにアーセナル乱入イベントが発生したり、ストーリーミッションも作戦内の行動次第で展開が変化するケースが存在するので何度もプレイする際の楽しさが用意されているのが素晴らしかった。
 
とあるミッションで救援に来る仲間が直前までの行動によって変化したり、会話時に触れてた最初に被弾した機体がそのミッションの修理代を持つといった賭け事も結果に反映されるし、乱入時の組み合わせによって会話が発生したりなど、他の人の感想やツイートからその存在を知ったものも少なくない。
 

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あと周回する際に感心したのが、ミッション開始時のブリーフィング部分だ。
 
本作ではしっかりとミッション開始前にその概要が説明され、場合によってはどのアウターや旅団が参加するのかの会話パートが差し挟まれるのだが、クリア後のフリープレイなどでアクセスする2回目以降はミッション出撃画面から概要説明の項目を選択しない限り表示されないようになっている。
 
これによって2回目以降はミッション名を確認してすぐに作戦を開始することが可能になり、結果連続プレイの支障を損なうことなく世界観の掘り下げに成功している。
 
このように本作『デモンエクスマキナ』はミッションを周回させる面白さややり応えを兼ね備え、周回するモチベーションを阻害することのないように考えられたシステムが組まれているのだ。時代が時代ならケイブンシャが一生楽しむ本シリーズを出してたと思う。
 

斃しがいのある大型イモータル

本作で特に楽しいミッションのひとつが「大型イモータル」と呼称される巨大兵器との戦闘だ。
 
性質としては「アームズフォート」よりは「あんなもの」寄りの属性を持っており、更に何れも巨体に見合わぬ機動力と跳躍性を秘めており「動き回る巨体」として極めて脅威として描かれている。
 

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これら「大型イモータル」はクリア後のエンドコンテンツ時こそただの餌だが、ストーリーミッションを進める際の装備が整ってない状態で、特に初見で対峙した際のプレッシャーは中々恐ろしいものとなっている。
 
対処が分からないうちは程よく苦戦に陥る調整となっており、自機の機体の装備には勿論ロック可能距離が比較的近めに設定されている事もあり、かなりの頻度で「敵の激しい攻撃を紙一重でかわしつつ攻撃を与え続ける」緊張感を憶えることが出来たのが非常に楽しい。
 
また、襲ってくる大型イモータルのバリエーションも千差万別で、「連続で体当たりを繰り出すモグラ型」「吹雪で視界の悪い中で剣を構えゆっくりと歩いてくる2脚型」「弱点部位が胴体内で捕食した卵のように蠢き並走しながら狙う必要のあるヘビ型」「胴体裏を攻撃する際に飛び掛かってきたり踏み付けを仕掛けてくる4脚型」など印象深い戦闘シーンを体験できる場面が極めて多かった。
 

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加えて先に挙げた期待搭乗が基本仕様のガレージ画面を経由してくれるおかげで本作では「自機アーセナルを見上げるパイロット」「大型イモータルを見上げる自機アーセナル」の二段構えの巨体に対する脅威と安心感を憶えることの出来る巨躯と矮躯の構図が出来上がっているのが遊んでいて楽しい。
 
エンドコンテンツとして消化している場合、大抵のは拡散レーザーでフルボッコすれば撃破自体「は」容易なのだが、コアを部位破壊し続けないと追加で入手できる強化パーツにも影響が出るのである程度の狙いが必要だったりと、大雑把でありつつそれなり以上に駆け引きが存在するのも有難い。
 
初公開のE3 2018トレイラーでつかみとしてアピールされていた大型イモータル戦は、製品版にてしっかりやり応えと迫力のあるミッション群として機能してくれているのだ。
 

音楽周り

音楽部分についても触れておきたい。本作のBGMはバンダイナムコサウンドチームが手掛けており、陸空どちらでも高速で戦闘する本作の飛翔感を彩る良い仕事をしている。
 
発売前のPVや公式サイトでは中鶴潤一と濱本理央の2人が参加する旨がまず公開されていたのだが、蓋を開けてみると他にも平井克明、三崎修吏、橋本大樹、北谷光浩、山内祐介、宇佐美十章、石川哲彦、田島勝朗など参加メンバーが多いことに驚かされた。
 
そしてそのどれもが非常に良質な出来で、ギター激しいサウンドやオーケストラサウンドなフィールドBGM、そして印象深くも煩くなり過ぎていない拠点周りのBGMなど、音楽を聴いたら場面を思い出すことが容易になりそうな仕上がりだった。
 
個人的に驚いたのが本作で使いどころ含めて特にテンション上がった一曲である貴族ズのボーカル付きの戦闘BGM「Shell」を、Linda AI-CUE(石川哲彦)が手掛けていた部分だ。
 

発売日付近で対戦を実装しなかった英断

本作の仕様で個人的に地味に良かったと感じた点に、プレイヤー同士の対戦がロンチ時点では実装されてなかった部分がある。
 
というのも。装備を整える選択肢の多い作品類は往々にして「状況に応じた最適解を求める」方向に組み合わせが帰結され、対人戦という環境が固定化されがちなルールの安易な実装はそういった「帰結する最適解」が固定化されてしまう。
 
そして組み合わせ総数が膨大になりがちなメカカスタマイズアクションでは「量産機問題」を早い段階で噴出させてしまう問題を常にはらんでおり、早い段階で「使えないパーツ」判定が行われてしまうリスクも存在するのだ。
 
本作にてアーセナル構成に用いるパーツの数は「頭部:22種類」「胴体:20種類」「右腕:22+4種類(通常腕+武器腕)」「左腕:22+4種類」「脚部:22種類」「プロセッサ:7種類(上位下位の条件分け含まず)」で本体部分だけでも単純な掛け合わせで320万もの組み合わせが、武器部分は細かいバージョン違いを抜きにしても左右腕部と背部収納で「手持ち武器:60種類」「肩部武器:26種類」「オーグジュアリ:12種類」で装備組み合わせが400万通りとなり、アーセナルひとまとめでの組み合わせパターンは12兆通り考えることが可能な計算となる。
 
メモリ内に収まる組み合わせを考慮しても、膨大な数の機体を考えることができるのは確実だろう。
 
加えて総パーツ数は241種類から更に各武器に特徴が異なるグレードの物が用意され、レアリティ枠としてのスロット穴数とアタッチメントの概念も存在するので、結果として考えられうるアセンブリの組み合わせは考えられないほど存在することになる。
 
そもそもの話として、メックアクションにおいて装備を組み替える目的とは「究極の汎用機を生み出す」のではなく「各状況に対応する装備を考慮」する場面においてその特徴が生かされ、その数多くのパーツを考える余地が生まれる。「対戦という単一の目標」に対しては、推奨されるアセンブリが限られた組み合わせのみになってしまうのはどうあがいても不可避な事象なのだ。
 

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それこそ例えば5vs5でプラントを奪い合い相手の陣地のコアを破壊するくらい迄ルールを紆余曲折する事で、個々のプレイヤーの行動それ自体が変化する環境の戦場として成立させるくらいまでやらないと交換可能部位の多いカスタマイズメックアクションの強みは活かしにくい。
 
つまるところPVEのやりごたえとPVPのバランスの良さとは、決して同一の方向の調整にはいかないのだ。
 
例えばハクスラ系のFPSである『ボーダーランズ』シリーズも対戦要素はあくまでオマケの決闘として設定してたし、『Destiny』も対戦を行う際は武器やアーマー性能を均質化させるなどステータスに直接弄るある意味ゴリ押しめいた方法で実装していた。(その上でも尚あのクルーシブルは辛さしかなかったが、シーズン目標だと猶更)
 
本作『デモンエクスマキナ』で、発売が近づくまで対戦の実装は明言されず、実際に実装される事になってもアプデ後の追加要素的な位置づけで配置されるという流れで、ロンチ付近でオンラインやローカル通信で遊ぶ要素がPVEを主体に設定されていたのは、極めて英断であると感じた。
 

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もうちょっと頑張ってほしかった商品展開周り

細かいところではあるが残念に感じた部分のひとつに、ゲーム本体の商品展開周りがある。
 
本作の欧米でのローカライズや販路確保は任天堂の海外支社が担当してる。そして昨今の任天堂案件に倣って本作にも様々な特典が付いた初回限定のコレクターズエディションが発表されていたのだが、パブリッシングの関係でか国内では発売されなかったのだ。
 

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内容としてはパッケージ機体の完成品スタチューと大判の100Pアートブックとサウンドトラックが大型化粧箱に梱包されているものだったらしい。
 
特にアートブックの内容に河森正治の設定画が可動部分の解説含めて高精細に掲載されているもので、せめてこれだけでも国内でも大判の設定資料集を出してほしい次第である。眉神様の太線で描かれた設定画は特に大好物だ。足元にベタ塗り影が付いてるなら猶更良い。
 
任天堂案件のリミテッドエディションと言えば最近も『風花雪月』と『アストラル~』の限定版がどちらもアートブックの作り込みが素晴らしかったので余計残念に感じたのだ。
 
フィギュアについても、国内では寿屋からプラモデルとして立体化の予定があるのだが、指先がかなり不器用な身なので綺麗に作ってやれる自信が無く、どちらかと言えば完成品が欲しかった次第だ
 
パッケージのデザインもシンプルでこれはこれで良いのだが、出来ればもっとメカ動かしてる作品でござい感を出してほしかった。(具体的には、アセンブリ中のアーセナルだったり背中を大胆に大写しにしたコンセプトアートなどを用いたやつとか欲しかった)というか、それこそ、欧米限定版のスチールブックケースに描かれていた大型イモータルの残骸を前にしているアーセナルのイラストと毛筆のタイトルロゴが組み合わさったパッケージデザインが好みだったのでそれ採用して欲しかった。
 
あとは、ゲーム起動時のオープニングMV的なものが実装されてない部分も、ちょっとしたE3のトレイラーを手直しした程度でも良いから入れて欲しかったと感じる。特にこの数か月『風花~』『アスチェ』『ボダラン3』とテンション上がるイントロムービーが入った作品が連続してたので余計そう感じる。
 
まぁこれらの不満点は発売前に期待していた以上に、製品版の出来の良さを感じたからこそ浮き彫りに感じた問題部分なので、粗探しに該当する部分ではある。
 

まとめ

総括すると『デモンエクスマキナ』は粗っぽさこそ目立つものの、メックアクションとして備えて欲しかった要素をひととおり実装してくれており、ただメカを動かしてるだけでも楽しいので、空いてる時間ガレージに入り浸って試験場でテスト先生と戯れ続けたくなる仕上がりだった。
 
 
それでいて、どことなく懐かしい手触りも用意してくれており、個人的に物凄くクリティカルヒットな出来の作品だった。
 
 
 

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ありがとう佃おじさん
 
 

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ありがとう眉毛
 
 
 

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アップデート+ノベル版楽しみにしてます。
 
 
 
DAEMON X MACHINA(デモンエクスマキナ)-Switch

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余談1:本作のメカ表現の技術解説

本作のトゥーンメカニック表現に関してどのような実装を行ったのかの講演が公開されており非常に興味深い内容だった。
 
特に本作はインタビュー時点でもただの表現でなくどこまでもアニメチックに目立たせるエフェクトを際立たせるのかについて試行錯誤が繰り返されていた作品だったと話していたのでそこについて踏み込んで解説してくれているのが有難い。
 

 

メカアクションゲーム『DAEMON X MACHINA』 信念と血と鋼鉄の開発事例

 

余談2:佃NXの個人的な無念(読まなくてよい)

本作のプロデューサーは『アーマードコア』シリーズにて、特にシングルミッションが面白く仕上がっていた作品である『アーマードコア2』『~3』『~ 3 サイレントライン』を手掛けていた佃健一郎が開発に携関わっている。
 
『AC3SL』がシリーズの集大成として大変楽しく遊べたなか最新作である『アーマードコア ネクサス』の開発に着手している事を、当時のゲーム雑誌の情報で知って期待していた憶えがあったのだ。
 
流石に15年以上も前なので流石にうろ覚えなのだが天地が反転した特殊な施設内で戦闘を行っているスクショからも、よりケレン味のあるビジュアルで主人公がつよいシステム(当時どちらかと言えば強化人間改造派で火星版水曜機関に通ってたりしてた)や、未来と過去の二つの要素が存在する意欲的な世界観など、更なる進化として新しいACを楽しめるものだと楽しみに待っていたのだ。
 
そして発売を迎えたワケだが、色々と不便な仕様になっていることが判明し「新生ってそういう方向なのかぁ」と結構落胆していた。その後インターネットの情報により『NX』には幻のバージョンが存在しており、製品としてリリースされたものは仕切り直しされたものであることが判り、何とも言えない気持ちになった覚えがある。そもそも当初は集大成的な側面強かったのに下手に「新生」させようとしてなんで遊びにくくなったのかと小一時間
 
加えてあの時期『ナインブレイカー』やらで気持ちも8割くらい離れてしまったし、トドメにOVA版のゴタゴタとメカ描写がクッソヘッタクソな漫画版の悲劇も体験して、元々ナビゲーションガイド以外まともな副読本も出版されてなかったし割と当時この会社IP軽視してんのかな?と本気で疑ってた記憶がある。
 
一応『AC4』や『ACfA』で機体性能の制限が少ないアセンブリも狙える作風に戻ったのだが、当時の『4系』のディレクションと『LR』のプランナーを担当したのがのちの『デモンズ~』から「ソウル系」の概念を確立した宮崎英高の案件だった部分で得心が行った覚えがある。
 
幻の『佃版ネクサス』の特徴として「破壊可能な建造物」「パーツとして存在するエイム補助システム」「より強化された弾幕数」「変化する天候要素」などが挙げられる。ここらへん『デモンエクスマキナ』で少なからず要素として拾い直されているようにも感じて15年越しの蟠りが幾分か溶けたような気分を覚えた。
 
 
万が一億が一那由多が一IPとしてアーマードコアが再起動するような事態があっても、恐らく品質が良かった初期PS2時代の作風に戻ることはどうあがいても期待できないし。そんな意味でも本作『DXM』どこかクラシカルな作りでゲームサイクルを構築してくれたのは有難い限りだ。(まさか少し前に『メタルウルフカオス』のリマスター版でよりにもよってデボルバーに駄目移植されてフロムもそれをスルーしてリリースの許可を出した部分で怨嗟の鬼に成りかけたのはここだけの話・・・)
 
『デモンエクスマキナ』に於いて『アーマードコア』を手掛けたスタッフは、プロデューサーとコンセプトメカデザイナー以外参加しておらず、ほぼ完全に別のスタッフで構築されているとの事だ。だが、その座組で、ここまで描写解像度の高いメックアクションが作られたのは只々只管感嘆させられる。
 

dougin-1809.hatenablog.jp