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GAME LIFE HACK

ゲーム生活、少し変えてみませんか?

【考察】 なぜ『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』で武器は壊れるのか?「投資の駆け引き」というゲーム性についての話

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が今年リリースされた作品に留まらず、ここ数十年の間に発売されたゲーム作品のなかで最高傑作であることは遊んだ誰しもが疑う余地のない事柄であるだろう。
 

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だが、ブレスオブザワイルドが名作として機能している大きな理由とはどの部分から来ているのだろうか?
 
この部分を考える度自分の場合、圧倒的に丁寧な作業の積み重ねに埋もれてしまい、本質的な面白さの核に行きつかないため微妙にもどかしい気分になってしまっていたのだ。
 
面白いことは疑いの余地が無いのだが自分が面白と感じてるのはほんの表面的な部分なのではないか?真にプレイ時間が吸い取られている原因はもっと奥の奥の奥底の根底に横たわっているゲームプレイ構造から来てるのではないか?と考えてしまっていたのだ。
 
何処までもアクセスできる広大なフィールド、様々な方法が存在する戦闘システム、物理エンジンと化学エンジンの芸術的な融合、最小限に抑えプレイヤーのナラティブ性に大部分を委ねたストーリーテリングの絶妙さ、物理ミニパズルの形式を取った発想の瞬発力による緩急が成立しているダンジョン構造、可愛らしさと凛々しさの両立が成立しているキャラクターデザイン、そして純粋に美しい風景描写、これらの要素は確かに本作を名作から傑作に押し上げる要素として成立しているだろう。ではそれらを取り纏める遊びのキモとしてどういったメカニズムが根底に潜んでいるのだろうか?
 
自分は本作を遊びながらゲーム内の謎解きとは別の、ゲーム作品そのものにかけられた魔法について延々と考えつづけた結果、ある一つの推測に行きついた。
 
 
キーワードは「投資」「収益」である。
 
 
今回は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』について、「投資する」という概念からそのゲーム性を分析してみたいと思う。
 

 

 
本記事はストーリー部分についてのネタバレは殆ど入れていないが、ゲームの遊びについての所謂「ネタバラシ」という方向で切り込んでしまっているので、「面白さの発見」というビデオゲームの魅力をスポイルしてる可能性が極めて高いので未プレイの人は引き返せ今すぐに、そしてニンテンドースイッチなりWiiUなり購入して今すぐ遊ぼう。こんな大名作今遊ばずしていつ遊ぶんだ。はやく遊ぶんだ。遊んでから読むかどうか考えるんだ。読んでから遊ぶかどうか決めるんじゃなくて、先に遊ぶんで遊べ遊んでください。
 
 
加えて今のうちに謝っておきます。自分は経済周りの知識に関して座学で斜め読みした程度だったので本記事において認識の誤謬が過分に含まれている可能性が高いことをご容赦ください。
 

ゲームにおける経済

まずゲーム作品に於いて主人公は往々にして無尽蔵の通貨発行権を備えた強力な造幣機関であるという前提を認識しておく必要がある。例えばザコ敵を倒し続ければ無限にお金が湧いて出てきて、時には強力な武器が無尽蔵に出現する、その強力な手足は疲れることを知らず24時間営業で労働力とその通貨をゲーム世界に与え続ける
 
遊び手が本質的に通貨発行権の性質を持ち合わせているという部分の解説に関して、こちらの記事が分かりやすいので大変オススメです。
 
 
4Xゲームをはじめとした戦略シムに関しては経済的側面が全面に押し出されているため言うまでもないが、対戦ゲームはプレイヤー同士のHPやSPゲージのやり取りという戦争という交易活動と取ることが出来るし、例えば一般的なFPSゲームはキャンペーンにおいても同様に当てはめることが出来る。銃器を扱うゲーム作品において通貨とはなんだろうか?それは「弾丸」である。プレイヤーは文字通り「実弾をばら撒いて」敵からより強力な武器や弾薬を補給することでステージを進めていく。この場合において「資金」は「弾薬」、「投資」は「銃撃」、「還元」は「弾薬や銃器や進行状況」といった形で収まることがわかるだろう。
 
またもっと広義に「リスク」と「リターン」という言葉に言い換えればそこにゲーム性が存在することが伺えるだろう。接近することによる被弾機会と引き換えに攻撃機会上昇を見越すことが出来るとか、回数制限付きの攻撃を何時繰り出すかの攻めの見極めや、相性が悪くても今のうちに倒し切れる可能性がある敵が存在する場合に無茶を通せるかどうかの見極めや、強力な回復手段の使いどころさんを何処にするかといったアイテムマネジメントなど多岐にわたる。
 
このようにゲームデザインは経済現象の一種としてその側面を分析することが可能なわけである。それを踏まえて今作『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』について考えてみることにしよう。
 
 
余談その1
今回の記事の本筋からそれるが、ゲーム内におけるそれぞれの要素が経済的に働いているという構造に関してこちらの本が分かりやすかったのでおススメしたい。

 

ゲームメカニクス おもしろくするためのゲームデザイン (Professional Game Developerシリーズ)

ゲームメカニクス おもしろくするためのゲームデザイン (Professional Game Developerシリーズ)

 

 

マキネーターと呼ばれる概念を用いたゲームにおける各要素のそれぞれの影響を求める為の考え方を学ぶことが出来る非常に興味深い参考書だった。
 
余談その2
ちなみにMetro2033のように弾薬が文字通りの意味で通貨として使われている作品も過去には存在することには存在した。

 

メトロ2033

メトロ2033

 

 

Metroでは弾薬専用の弾薬と通貨としても使える強力な弾薬の二種類が存在していておりそれらを使い分けることによってゲーム性を構築していたわけだが、困窮したサバイバル感の表現以上に機能していたとは言い難いと感じてしまった。自分としては全体的なプレイ感覚は大満足だったのでそこまで声を大にして言うつもりもないのだが、弾薬部分に関してはいっそ思い切って一本化した上でレベルデザインしても良かったのでは?と今でもふと思うのだ。なんていうか奇抜なシステムの域を超えてない的なそんな感触。
 
とはいえ作品としては大変面白い怪作なのでぜひ遊んでほしいのですよ。
 

ブレスオブザワイルドの場合

先に挙げた点を踏まえると『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の、武器が壊れるというゲームデザインについてある程度推測めいたことが出来る。
 
まず、『ブレスオブザワイルド』での基本的な武器の入手方法は「店頭での購入」ではなかったという事を思い出してもらいたい。本作での武器の入手方法は探索の末の取得、若しくは敵との戦闘による強奪なのだ。ここで重要なのがいくらお金を稼いでもハイラルの地において、武器を購入する方法で手に入れる手段は殆ど用意されていない部分だ。
 
そう、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』で武器を「購入する方法」は殆ど「用意されていない」のだ。
 

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基本的に村や里に向かっても購入できるのは服や食材ばかりで剣や盾などの武器の類を購入する手段は殆ど存在しないのだ、消耗品である矢に関してはさまざまな種類が用意されているがそれでも弓に関しては店売りされているケースはほとんどない。皆無と言っていい。遊んだ方なら武器を購入して調達したという覚えがない人が殆どだろう。
 
ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』で武器を手に入れるためには、探索して見つけ出すか敵をしばいて強奪するしか無い。基本的にこの二種類しか用意されていないのだ。
 
そしてこの「武器入手の仕様」と対になっているのが「武器破損システム」なのだ。
 
本作での戦闘とはどういったものだろうか?それは壊れる武器を抱えての使い捨ての連続だ。刃物は使い続けるごとに脆くなり、弓は矢の消耗と同時に弓自体も破損に近づいていく、盾はその身を引き換えに主人公の身を護る。このように主人公の武器には耐久力が設定されている、限界が来るとクリティカル確定で破損する。
 
その末に手に入るものは何だろうか?
 
そう「新しい武器」である。
 
武器を入手するために敵を倒す必要があり、そのためには武器を使う必要があり、武器は使い続けると消耗する。プレイヤーは新しい武器や素材を手に入れたいがために手持ちの武器を敵という名の炉にくべる。そうして手元の武器と引き換えに新しい武器を入手する。その新しい武器を使ってより強い敵、見知らぬ台地、そして様々なクエストを攻略していくのだ。
 

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ヒノックスの胸元には様々な武器が装飾されているであろう理由がそれで、またプレイヤーは極めて強力なライネル武器を入手するために弓矢を使い潰したり鈍らになるまで剣を振るったり盾を散らしたりチェッキ―してもらったシーカーストーンや仲間の力を借りるわけなのだ。
 
つまり本作では「敵を倒す」事は「敵に対して武器を投資する」事に他ならないわけで、その「投資」をもって入手可能なのはより強力な「武器の入手」という「収益」なのである。
 
以上からブレスオブザワイルドの武器破壊システムの裏側には、本作特有の武器入手条件との間に対の関係を持っているという事が分かるだろう。
 
経済活動とは資産が流動的に推移するという要素も含まれている。この「供給」と「破損」のシステムは自然とインベントリ内の武器を次々と使うように促すように出来上がっているわけだ。最終的に残るのは恐らく「退魔の剣」のみだろう。これすら本作では常時使える万能の武器として作られてはいない。
 
この「投資」と「収益」の関係性は、本作において戦闘以外にも散りばめられている。
 
 
 
ハートを回復するためには狩猟と料理を経由しなければいけないのだが、料理に関しては効果が出るか分からない組み合わせに対して自身の料理の記憶や推測力を駆使し、食材を鍋に投入しそのリターンを享受するという連続になっており、この場でも「投資」と「収益」の相互作用が発生している。狩猟に関しても同じく耐久力のある武器を用いて森林の奥深く険しい山を越えなければならずこの部分に関しても自身の労力に対して投資と収益の関係が生まれている。
 
また、新規エリアの探索においては正真正銘何が待ち受けてるのか予想がつかないエリアに対しての周囲や現地での情報収集や探索先に向けての回復手段の用意や未知の敵に対しての攻撃手段の拡充や、発見した祠のクリアなどありとあらゆる事前準備が必要となる。
 
(誤解しないでほしいのはブレスオブザワイルドはその部分に関して「そうしたら安全になる」という方向で調整を行っているため、全てが必須であるという調整を行っていないところなわけで、そこがレベルデザインにおいてミソでもある部分なワケだ。例えば遊び手側で腕前や土地勘に自身があるのであれば幾つかの過程を省くことが出来るし、かばんちゃん並みに発想力があればより広い範囲で人類の英知を活かすことも出来るというわけだ。)
 
このように「投資」と「収益」の相互関係は作品全体に存在しており、ただルピーを稼げば万事解決というもぎたてチンクル仕様ではないのが本作のミソであるわけだ。
 

必ず何かを渇望させるレベルデザイン

ブレスオブザワイルドは最初から最後まで枯渇と戦い続ける作品である
 
雑魚的に数回殴られただけで死ぬ序盤は「盾」や「体力」が足りないと感じるし、中盤に体力が増えてくると今度はその回復手段の為の料理の素材やレシピが足りなくなると感じ、探索はじめこの世を回るために「情報」を常に求めるようになり、村や里においては幾らかのルピーが必要になるだろう。
 
そして、勿論終盤になると敵キャラに強力な個体がチラホラ混じってくるという点において強力な武器が手に入りやすいという所謂インフレーションが発生するのは本作も例外ではない。その部分を任天堂ゼルダチームはどう対策したのか?
 
それは「インベントリ容量」の設定である。
 

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本作では素材や服装以外アイテムは持てる量が限られているようにシステムで設定されている。この仕様は常にプレイヤーに対して何かしらの選択を迫るように作られているのだ。終盤ハイラル城に攻め込んだ際、武器をはじめとしたお宝のザックザク具合に驚かされた人間は少なくないハズだ。ここで直面する問題は「どの武器を捨て、どの武器を持ち続けるか」という取捨選択になるだろう。
 
壊れることが確定しているにも関わらず持てる量が限られているこれは極めて悩ましい。独特の臭いのするコログの実を集めてもこの問題が解消される可能性は殆ど無いと言っても良いだろう。例え極めて強力な回生の退魔の剣を抱えていても目の前に表れた王家の武具を見す見す諦めるのは勇気が要るわけである。
 
このことから分かるように本作は頭のてっぺんから尻尾の先まで「何かを渇望する」という動機をプレイヤーに抱かせる事に成功しているわけなのである。
 

今回の分析からも本作は「ガンガン武器を使いつぶして、どんどん補給する」という流れが用意されているという事が推測できた。しかし長々と語ったわけだが一つだけ言えるのは今回分析した要素は、これから先ありとあらゆるタイトルに対して呪縛としてすら存在しかねないこの大傑作の面白さの核のほんの断片に過ぎないという事だ。
 

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まだまだ『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の面白さを構成する要素はたくさん用意されているように見える。WiiUの華々しい幕引きとニンテンドースイッチの華麗な幕開けという大役を担った本作、自分のセーブデータではプレイ時間が80時間を超えてもクリア率自体は三割も超えていない。あまりにも底が見えない作品だ。
 
 

蛇足:ハードモードを予想してみる

今回の記事を踏まえて今後追加DLCとして配信される予定のハードモードはどのような調整がなされるのかもある程度当てずっぽうで予想を立てることが出来る。
 
現状のブレスオブザワイルドで唯一壊れ性能に近い仕様のシステムがひとつ存在する、それはオートを含めた「セーブデータ」の仕様である。
 

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本作のセーブシステムはスタートメニューから直接いつでもどこでも保存することが可能なものになっている、なので不意打ちされない限り強敵と戦う前に保存することが可能なのでいくら武器が壊れてもアイテムを浪費しても試しに立ち向かったり効果的な戦い方を模索することが可能な仕様となっている。
 
神トラ2のように風見鶏を探しに行くような仕様をブレスオブザワイルドで実装する可能性があるものだと考えられるわけだ、もしくは篝火かもしれないが。
 
つまりハードモードにおいて任天堂は「セーブの仕様に手を加える」のではないかと予想でカシオミニを賭けつつ記事の締めとしたい。

 

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

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