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【分析】 ニンテンドースイッチのジャイロ操作はなぜ画期的なのか?FPS/TPSにおける視点移動問題とその解決法

ゲームパッドを用いたFPSやTPS等のシューター作品が広く遊ばれるようになってかれこれ20年近い時が経った。特にその中でも、別の機能を持ち合わせた左右のスティックを同時に操ることで3Dフィールド上を見回し駆け巡るという操作体系は、もはやデファクトスタンダードになっていると断言しても過言ではないだろう。
 

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だがこの操作体系、分かりやすさを含めた手軽さの代わりに解決すべき問題が幾つか存在するのも事実である。その問題点は明確に原因が分かっていても解決が難しい類のもので、小手先では様々なアプローチが取られているが根本的な解決には至っていないのも事実である。
 
今回はその問題に対して根本から解決しようとしている例のひとつをこれから分析していきたいと思う、その例とは「ニンテンドースイッチ」に搭載されてる「ジョイコン」のことだ。
 
 
 

既存のゲームパッド操作の抱える問題点

ゲームパッドFPSやTPSなどのシューターを遊ぶ際の課題点は大きく分けて二つ存在する。それは「保持の安定性」と「視線移動の機動力」だ。
 
右親指どっちに置くの問題
ゲームパッドにおいて採用されているABXYボタン、所謂「サムボタン」と呼ぶこともあるそれらは、右手側の親指で押下するという特性上同じような近い位置に配置されている「右スティック」による視点移動との間でせわしなく「親指を保持し直さなければいけない」という課題が存在する。
 
例えば一般的なシューター作品の、Aボタンでジャンプ、Bボタンで殴りもしくはしゃがみ、Xボタンでリロードや武器の拾い上げ、Yボタンで武器の切り替え、といった操作を基本にするようなものは、その分かりやすさや汎用性の高さという強大な利点と引き換えに、とっさの状況対応等の即応性を犠牲にしているという側面が少なからず存在しているワケで、ジャンプしたりスライディングしながら敵を正確に狙い撃破するのにはゲームパッドだと更なる修練や慣れが必要であるというわけだ。
 
因みに左人差し指の先端と関節を同時に使用して移動と視点操作を同時に行う、俗に「モンハン持ち」と呼ばれている一連の保持方法は人間工学に著しく反する劣悪な操作例である。右スティックに加えてターゲットカメラが標準で実装された現状では猶更だ。
 
 
解決方法として現在打ち出されてるのはキーアサインを最初からそういった操作に特化させるように設定しておくといったもので、人差し指側でジャンプ操作を行うバンパージャンパーなどのボタン設定が用意されてるのはその為であると言っても過言ではないわけだ。(例えばミラーズエッジではこの操作方法が基本として設定されている。)
 
だがバンパー部分にジャンプ操作を採用しそれが標準化されているものは片手で数えるほどしか存在してないのが現状だ、そこらへん意外と欧米も踏ん切りがついてないように見える。
 
(一応、単純にボタンを増やしちゃえというXBOXONEはエリートコントローラーのようなハイエンドマシンによるゴリ押しという手段も存在する。欲しい、高い、欲しい、使いたい、でも高い、ウーム・・・)
 
スティックとボタンを両立させるために操作デザインやシステムデザインから根本的に別物として作り上げたものとして「ギアーズオブウォー」があるわけだが、そこに関しては前回の記事で詳しく掘り下げた。というか本記事を書くうえであまりにも肥大化したから切り離したというか・・・
素早く狙うの難しいよね問題
もう一つの問題点が繊細さや機動力といったそもそものエイム周りの確度についてだ。マウスでFPSやTPSを行う利点のひとつにはこの高機動な視線移動と思い通りの場所で視線を合わせることが出来る正確さの両立というものがある。マウスで狙うと即思い描いたところに視点と照準を合わせる事が出来るという利点は、キーボード周りのWASD+Shift移動による非直感的な移動周りをはじめとした過剰に集約された操作体系の煩雑さを抜きにしても非常に強力なアドバンテージであると言えるだろう。
 

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この部分に関して、コンシューマー機におけるシューター系ゲームのスティック操作は、倒した際の加速度の設定や気付かない範囲での吸い付くようなアシストシステムなどを採用することでその微細な視点操作周りを補うように対応されている。加えて左スティックでの動きとの併用によって微調整エイムを行う操作はテクニックのひとつとして定着している部分がある。が、このどちらも現状のPCとコンシューマ機の間に横たわるエイム精度の土台部分からのアドバンテージを覆すには至ってないのもまた事実で、クロスプラットフォームでのゲーム対戦を行う上での関門とも呼べるだろう。
 
以上より、右スティックによる視線移動の問題とは「右親指先の保持安定性の欠如」と「スティック操作から来る繊細さと機動力の減衰」であることが分かるだろう。デバイスの単純化と操作取得の容易さ、加えてトリガーを引くという操作の見立ての判りやすさの代償として生まれた課題なワケだ。
 
ではこの部分に対してニンテンドースイッチはジョイコンを用いた際のジャイロ操作はどういった点で可能性を秘めているのかを分析していきたいと思う。
 

「ジャイロ」を「右スティック」として使わせる

結論から先に言っちゃうとなんてことはないのだが要するに「右スティックとしてジャイロを使う」事でこのスティックとサムボタンとの間に存在する、右スティックの正確性を中心にした問題を解決してるのが「スプラトゥーン(と同2)」や「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」である、という話をこれから長々と説明したいわけだ。言いたいこと言い切っちゃったよこいつ。
 
ジャイロによるエイムシステムのキモはジャイロ操作を必ずしも完全に視点制御を担っているだけではなく、「右スティックの補助」という予備の視線移動操作としても使うことが可能で、その結果「どちらをどれだけ使うか」の割合を自身で設定できるところにある。そしてこの操作方法を採用する最大の強みは「ABXYボタンに親指を長時間置いたままでもある程度視点移動が可能」という部分になる。つまりサムボタンを用いたジャンプ操作やマップ移動、ジャイロリセット、インタラクトその他諸々の基本操作を行いながら同時に、体の向きを変え、狙いを定めることがより容易になったわけだ。
 
 

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例えば「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」におけるシーカーストーンの爆弾以外の特殊能力はジャイロで狙いをつけABXYのサムボタン側で距離の設定や発動などの追加操作を行う。右スティックの役割がそのまま傾き操作に移行してる分かりやすい例だろう。発動時の傾き位置が起点となるので狙い状態移行が同時に再キャリブレートボタンも担っている非常にスマートな仕様である。
 
(逆にジャイロオフやWiiU版のプロコンで操作した人なら実感しただろうが右スティックをもってこれを操作すると非常に難しいものになっている。)
 
また「スプラトゥーン2」においては、スプラマニューバーという「射撃中Bボタンで高速移動しながら狙いを定める操作」を要求させるブキや「ジャンプしてから振ることで範囲と引き換えにミドルレンジへの攻撃を可能にする」というローラー系列の新たな攻撃方法が採用された背景には、ジャイロ操作による視点移動がある程度以上に認識されからこその新たな提案だった事は想像に難くない。
 
ブレスオブザワイルドとスプラトゥーン2。このふたつの作品はWiiU時代のジャイロ操作を用いた任天堂作品に比べて明らかにジャイロを使うことが前提となった操作体系をより推し進めているようにも分析することが出来る。
 

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加えてジャイロ操作による視点制御は「素早く」「ある程度正確に」狙うことが出来るという点も大きな長所となっている。
 
主に「腕の力で素早く動かし接地面との摩擦によって制動を行う」ことで精密なカーソル移動や狙いを行うことが可能なマウス操作に対し、「どの方向にどれだけ動かすかを倒す強さと向きと時間によって制御」するスティック操作のあいだではどうしても正確さには埋められない溝がある。
 
そこをジャイロ操作は、上腕部のモーメントや手首のスナップの利かせ具合などを用いてデバイスを傾けることで相対的にカメラの方向や移動角度を決定するという特性上、マウスを用いたカメラ移動とその即応性の塩梅が極めて近いものとして成立させているのだ。
 
スティックを「傾け続ける時間」によってカメラ移動が決定されるゲームパッドのみでの視点移動より、デバイスを「どのくらい傾けるか」によってカメラ移動が決定されるジャイロコントロールは、心理的なニュアンスがダイレクトに反映されてしまうというピーキーさという課題を抱えつつも、使い手の操作時のニュアンスを繊細にデバイス側に伝達することが可能になってるわけで、流石に精密ではないもののほぼ正確で早々狂うことが無い人間の感覚を上手く活用できる操作体系であると期待できるのだ。
 
このようにジャイロを用いたエイミング操作は、摩擦力によってその制動具合を調整するマウスよりも視点移動のブレーキングは慣れが必要な部分ではあるが、ゲームコントローラーという必要最小限のボタンとスティックを搭載することで保持力の確保とハウジングされる筐体のサイズや操作把握に対する負担のコンパクト化を保ちつつより自由度の高い操作性を実現できる可能性を秘めていると分析することが出来る。
 
余談:ジャイロ操作に適したゲームデザインについて
ところで、ジャイロを用いた任天堂タイトルで特に見られる傾向として、手ブレなどによる長期的な照準安定性の低さや攻撃の外しやすさはそもそも前提で、レスポンスの高さを強みにシステム面で補助や誤差の飲み込みを行うような調整が行われているフシがあるという話もしておきたい。
 
例えば色を塗るというコンセプト上通常のシューターのそれより撒き散らすように視点を動き回す「スプラトゥーン」はもとより他にも、ジャイロで視点(ゲームパッド側)と照準(TV画面側)を制御し最大3発まで撃てるようになったロックオン攻撃で敵を倒すのが前提の操作デザインになっている「スターフォックスゼロ」や、スライドパッドやスティックによる視点移動後のロックオン操作後に敵や球体オブジェクトの細かい照準補正や部位を狙う為にジャイロ操作を設定した「メトロイドプライムフェデレーションフォース」など、ジャイロ制御のみでの正確な狙いは最初から要求しているわけではなく機動力を高めるための入力に据えている傾向がうかがえる。
 

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因みにこの部分でもユニークなのが「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」の弓操作で、単純なRZ押下での弓構えでは右スティック操作をそのままエイムに割り振っているが、先にLZを押下するZ注目操作と同時にRZを押下する弓構えは先に挙げたメトプラFFのようなロックオンからの照準補正としてのジャイロ操作を受け付けるようデザインされている。これはスティック操作とジャイロ操作のハイブリッドな使い方として非常に興味深いパターンだ。
 
余談:作品毎に変化するジャイロエイムの仕様についてのお話
こちらも余談という形でまとめるが、先に挙げたジャイロシステムを組み込んだ「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」と同じくジャイロ操作が基本となっている「スプラトゥーン2」では使われているジャイロ操作の仕様が異なるという話について掘り下げておきたい。
 
ブレスオブザワイルドとスプラトゥーンのジャイロエイムはどちらも「右スティックとの併用」という面だけ見ると同一のものであるように見えるが、実のところ実装されている仕様はかなり異なったものとなっている。
 
この部分に関してはスティックを倒しながら同時にコントローラーを倒してみると分かるのだが、ゼルダでは右スティック操作時はジャイロ機能はオフになり、スプラでは右スティック操作時でもジャイロ機能は有効化されているのだ。つまりジャイロエイムは再キャリブレートの発動トリガーが、ゼルダでは弓攻撃その他機能の発動に加えて右スティック入力に割り振られているのに対し、スプラトゥーンではYボタン押下のみによって視点リセットが実行されているのだ。そしてジャイロ操作モードと右スティック操作モードのハイブリッドの実装の仕方が「ブレスオブザワイルド」では切り替え式、「スプラトゥーン」では併用式として実装されており、それぞれの実装理由としては「探索重視」か「狙い重視」かで選択が変化していると分析することが出来るのだ。
 
ところで今年のE3で発表された「メトロイドプライム4」の操作方法はどうなるのだろうか?ジャイロの適用のさせ方が作品によって異なっているというのは先に挙げた通りなので作品の詳細が分からない為完全な予想になるがいくつか考えることが出来る。
 
現状「Wiiで遊ぶ メトロイドプライム」「~2」や「メトロイドプライム3」は初心者・中級者向け操作で採用されていたような「画面内の照準がまず自由に動き四隅の特定エリアに突き当たって初めて視点移動が開始される」という仕様は現状のデファクトスタンダードからは外れているように感じる。カメラ操作と併用しつつレティクルに遊びを持たせるのは逆に現代では混乱を招いてしまうように思えるのだ。
 
また、かつてのWiiリモコンCMOSイメージセンサーを使った類の「画面に向けることでテレビ付近のセンサーに反応させる」といった仕様はニンテンドースイッチには必要なく、視点リセットのボタンさえ用意しておけば手元の姿勢に関係なく好きな場所でコントローラーを傾けての操作が可能になるというのはご存知の通りだ。この時点でWii時代のカメラ操作事情と大きく変化している。
 
なのでジャイロ操作がもし採用されるにしても今まで上級者向け操作として設定されていた中央から視点移動までのマージンがほぼ存在しない、つまり傾けたら傾けるだけ直接カメラが動く操作設定が基本になる可能性が高いのだ。
 
そう考えるとメトプラ4ではスプラトゥーンのように常時ジャイロ操作をカメラ移動として機能させ視点リセットボタンを備える方式が採用されそうだが、メトロイドプライムは基本的に探索要素も強い作品だ。いわばダンジョンのみで構成された一人称視点のゼルダと考えることもできるわけだ。探索重視の作品となると普段から常に手首のニュアンスが伝わる方式は酔いのリスクが考えられるし、加えて3~5分がワンセッションのスプラに比べて常時ジャイロを適用させるうまみが少ない。
 
実は一人称視点の探索重視のFPSでジャイロ操作を組み込んだ作品が去年任天堂から発売されていた。外伝作品「メトロイドプライム フェデレーションフォース」のnew3DS(や拡張スライドパッと装備時の3DS)の操作方法に近いものである。
 
以上よりリモコンによる赤外線センサーではない、ジャイロによる制御が可能なニンテンドースイッチという筺体で遊ばせる「メトロイドプライム4」の操作方法は、普段は右スティック操作で視点を見回しZLトリガーによるロックオンからの細かい照準操作によって敵にたいしての攻撃部位を狙い射撃を行う方式、だと予想することが出来る。あくまで予想な。
 
余談:カメラ反転問題に対する一つの解
ジャイロ操作を用いる利点として、3D空間を制御するうえで長らく問題となっている「カメラ操作の設定はスティックの傾き方向準拠かスティックの傾きに対して反転させるか」を解決できている、という部分があることにも触れておきたい。
 
一時期のシューター作品のチュートリアルに上下反転の設定をするかどうか組み込んだ作品もいくつか存在していたのもそこに悩まされているプレイヤーが少なくなかったという証拠と考えることが出来る。今でも(特にひと昔前の3Dフィールド系の作品に触れていると)稀に「ジュゲム」の存在を意識してしまいその流れで「どちらに動けばいいのか」の判断が遅れてしまう状況に遭遇することがある。それに昨今のゲーム作品においても視点反転をするかどうかの設定項目を実装している作品はよく見かけるし、現に「スプラトゥーン2」においても切り替えるオプション設定が存在するわけで。
 
この部分に対して今のところジャイロ操作は迷う余地が極めて少なく「上に傾ければ上を向く」「右に回せば右に回る」など極めてシンクロ率の高い操作感を実現している。
ジャイロ操作を採用することによる視点操作の直感性の向上に関して、「社長が訊く」は「スターフォックス64 3D」の回で以下のように語られていた。
 
岩田:(視点を反転するのかしないのかについて)なぜそのように個人差が出てくるんでしょうか。
 
ディラン:たぶん、なんですけど、“画面のどこを見ているか”で決まるんじゃないかと思うんです。カーソルを見ているか、自機を見ているかで。
 
宮本:そこでジャイロの話になるんです。3DS本体を上に傾けたら上昇するし、下に傾けたら下降するので、万人に共通なんですよ。
 
岩田:カーソルを見ているか、自機を見ているかに関係なく、誰もが共通に、しかも直感的に操作できるようにしたんですね。
 

www.nintendo.co.jp

※一部要約による改変あり

 

 
現状ジャイロ操作に対しての設定が感度の調整に留まっているのは、ジャイロを用いる際の上下左右への視点移動が傾き準拠であるというデファクトスタンダードを確立できているからと分析できるわけだ。
 
 

「分割できる」という強いブキ

ここまではジャイロ搭載のゲームコントローラーなら今までも実装されてた若しくは今からでも実装可能な要素を挙げてきたワケだが、ニンテンドースイッチの特徴の一つには「ジョイコンという分割デバイス」が搭載されているという点もある。この仕様は先に挙げたジャイロ操作にどのように作用するのだろうか?
 
ジョイコンの構成について改めて確認してみよう。ジョイコンは所謂オーソドックスな「左右スティック+4方向ボタン+ABXYボタン+4バンパーボタン+スタートボタン+セレクトボタン」という配置のゲームパッドをそのまま左右にぶった切ってそれぞれの手で持たせる形式のコントローラーとなっている(ジャイロセンサーは左右に乗せられ、加えて「補助LRボタン×2+ホームボタン+画像保存ボタン+Syncボタン×2」が搭載されている)。これにより任天堂特有のギミックとデファクトスタンダードな形式のコントローラー形式の両立が実現している。
 
さて、ジョイコンの分割形式とジャイロ操作はどのような強みを生み出してるのか?
 
WiiUゲームパッドやジャイロを積んだ通常のコントローラーはその筐体自体を傾けることでジャイロエイムが適用される。それは非分割形式な通常のゲームパッドなら当然だろう、だがこれによって動かす必要のない部分までその傾けの影響を受けてしまうリスクがある。例えば移動は静かに正確に行いたいわけで、激しく動かしたい部分とある程度直線的でも安定させて動かしたい部分の二種類の操作が存在するわけだ。キーボード+マウス形式の操作の長所がこの部分で、左手で安定したキーボード部分を操作しつつ自由に動かせる右手のマウス部分では素早く正確に対象を捕らえることが出来ているのだ。
 
だがマウス+キーボードによるPCゲームの環境は移動周り、つまりWASD+shift操作、に関してはいまだに加速部分含めて極めてデジタルな処理に甘んじているのが現状だ。その部分をマウスによる極めて自由度の高いアナログ信号で補っているし、加えて左手側ボタンの過剰な集約は基本的に応用が利くが煩雑であることは否めない形式だ。移動操作においてはアナログスティックの柔軟な処理はWASD移動のそれに比べてアドバンテージが存在するのは明らかで、サムパッドが導入されている左手専用デバイスがしばしばリリースされているのもそういった部分に対して需要があるからだ(正直Logicool G-13やRazer Tartarus辺りはめっちゃ導入したい、欲しい、高い、欲しい、使いたい、でも高い、ウーム・・・)。
 
精度の高さと視点移動しながらの様々な操作の応用の利きやすさを両立したマウス操作に対して、同じようにゲームに留まらず汎用デバイスとして設計されているキーボードをゲーム作品に使うのは多かれ少なかれ「慣れ」が必要な領域であるのは避けられない部分である。正直WASD以外の操作周りはちょくちょくキーコンフィグ見ないと戸惑うし総当たりでボタン試してみようにもキーの数が多いし、加えてゲームパッドに対して一度に使う指が多い。特に左手部分は。
 
ゲームパッドは正確さや即応性に課題が存在し、キーボードは操作の慣れや設備の大掛かりさが存在する。それぞれ長所があり短所が存在する部分を更なる別アプローチでの解決を図っているのがジョイコンであると見做すことが出来るという話を、これから行いたい。
 

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まず、ニンテンドースイッチのジョイコンは、物理ボタンやZトリガーボタンの押下感の確保やボタン数「移動の為に指先だけ動かせばよい左デバイス」と「右デバイス全体を銃に見立てた素早い狙いと攻撃」という機能の両立が成立させることが出来ている為、手軽さや分かりやすさにおいてアドバンテージの存在するスティック+ボタン形式のゲームパッドでありながらエイミングの操作感においてはジャイロを使う事でマウス操作並みの精度と速度を期待することが出来るわけで、いうなればジョイコンはPCゲームのマウス+キーボード操作をゲームパッド形式に落とし込んでそれぞれの長所を両立させることが出来ているデバイスと見ることが出来るのだ。Steamコントローラーに続いてこういったものが出てきたのは嬉しい。
 
あくまで取捨選択のひとつ、アプローチのひとつという話なのだが、ニンテンドースイッチはジョイコンの初期状態で提供される環境でありつつ応答性の高い操作として成立しているという仕様は非常にうまい作りであると感じた。しかも携帯機との共通のデバイスとして使うことが出来、状況によっては臨時のコントローラーとして分けて使う事も出来る、よくこれ思いついたなこれ。
 
 
ジャイロを採用したという強さについても掘り下げておきたい。ポインティングデバイスとしてのゲーム機向けコントローラーという話ならKinectWiiリモコンという先行例が存在したが、これらはテレビ側に設置したカメラやセンサーバー(厳密には赤外線発信ユニット)とのやり取りでその座標を取得するものなので往々にしてそのセンサーが存在する位置、つまりモニター部分、と必ず相対して使わなければならず結局のところ姿勢どころか距離も決まってしまうという問題があった。技術の進化と共にこれらは幾らかは改善されていったがそれでも一定のスペースは必要だったのだけは避けられなかった。
 
対してニンテンドースイッチで行うポインティングやマウス操作は純粋にジャイロのみで成立させる事が出来、極端な話テレビに画面を向けることなくその操作を行う事が可能なのだ。既存のゲーム機向けポインティングデバイスがセンサー前提の絶対座標だったのに対してニンテンドースイッチのジョイコンはカーソルリセットボタンを押した箇所からの相対的な傾きをからの座標移動を行っているという真逆のアプローチだったわけだ。細かいブレや時間に比例して徐々に発生するズレに対しての塩梅は今後の課題ではあるが現状でもカーソル位置の再設定などは既存のマウスの持ち直しや置き直しと同程度の手間で補正が可能な域で実現されている。
 
(一応Wiiリモコン時代の後半にはジャイロユニットであるモーションプラスがリリースされたがこちらに関してはWiiWiiU合わせても対応ソフトがあまりにも少なく当時は正直勿体無いと思っていたので、ニンテンドースイッチで再びモーションセンサーを搭載してくれたのは嬉しい)
 
加えてジョイコンは「軽く」「全てが無線で対応できる」というのも大きい。現状のVRヘッドセットが抱えている課題にも通じる部分だがデバイスを傾け振り回すという特性上、持ちやすさもそうだがとにかく軽さとケーブルの少なさは可能なら達成しておきたい部分であり、モーションセンサー周りの技術がある程度の地点まで成熟した今だからこそ出来たデバイス構成でもあると言える。おかげで僕はARMSでラッシュ決めても二の腕の筋肉痛で済んでるわけだ。
 

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以上から、ニンテンドースイッチはジョイコンの「分割持ちとジャイロ搭載の合わせ技」には今後のビデオゲームにおけるカメラ操作に対して大きな一石を投じる可能性が秘められているのではないか、と自分は考えている。あとはその先進的な操作方法を提案する上でそもそもの話、デバイス自体が広く顧客に対して覚えがめでたくなっている必要がという前提があるのだが、現状の勢いを見るにその部分は問題ないだろう。今後ちゃんと供給出来たら、ちゃんと供給出来たらの話だが。
 

ジャイロ操作の今後について

この記事を書いている間にもいくつかジャイロをエイム操作に用いた作品が発表された。
 
 
例えば「TESV:Skyrim ニンテンドースイッチエディション」では近接攻撃をモーションコントロールで対応させるだけでなく弓矢による攻撃をジャイロを用いて狙う事が可能なように作られてる事が先のGamesconやPAXで展示された試遊から明らかになったし、スイッチ版の「バイオハザード リベレーションズ」では狙い時のジャイロエイムは勿論、近接攻撃に加えてリロード操作もジョイコンふたつを用いて操作できるようになっているとのことだ、加えてまさかのスイッチ版の発売が決まった「L.A.ノワール」リマスターでは新たに肩越し視点の設定が追加されその上でジャイロ操作やモーションコントロールが追加されるとのことなので似たような形式でのジャイロエイムを期待することが出来そうだ。
 
こうしてみると持ち運べる事に加え、ジョイコンを使ったジェスチャー操作やジャイロエイムはスイッチ版独自の要素としてウリになると開発側が期待しているように見える。実際自分の周囲でもジャイロ操作が入ってるからという理由で購入を決めた方を何人か見かけたし私自身もこの没入感と分かりやすさに魅力を覚えている1人なので、今後も操作感の向上を模索しつつ対応ソフトが増えてほしいと切に願っている。
 

 

 

 

あ、VR用コントローラーについて書くの忘れてた・・・