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ゲームアワード2015にて最優秀美術部門を受賞した「オリとくらやみの森」とはどのような作品なのか?

考えたくない話だが今年も残すところあと一ヶ月を切った、切ってしまった。そして毎年この時期は、アカデミー賞のゲーム版とも呼べる「The Game Award」が開催される時期でもある。

今年も様々なタイトルがノミネートされ、受賞された。その中の一部門アートディレクション賞に輝いた「オリとくらやみの森」という作品がある。

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本作はその美術性ももちろんだがそれ以外の部分においても大変オススメできる作品だと自分は思っている。思っているんだったらここは記事として紹介するべきだろうということで折角なので全力で紹介してみようと思います。
 

 

 

「動く絵画」という表現がピッタリの作品

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ベストアートディレクションを受賞しただけあってゲーム画面に表示される「美しさ」は現行機種で出ている作品の中でも頭一つ飛び出た出来となっている。
本記事内で使っているスクリーンショットは実際のゲームプレイをキャプチャーしたものだが、どの場面を切り取っても一枚の絵として機能していることが分かってもらえると思う。この描写で秒間60フレームのヌルヌルとした動きでアクションが楽しめるのだ、しかも1080pの解像度で。
背景だけでなくエフェクトも美しく、流れる風や水、煮えたぎる溶岩や透き通った氷の表現など、歩き回った際の細部の美しさは実際に遊んでいると引きこまれてしまう。
 

印象深い音楽の数々

またこのグラフィックに加え、音楽も素晴らしい作りであることを話しておきたい。

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森林での神秘さ、洞窟での静謐さ、河川での清涼感、火山での激しさなどサウンドトラックの作りも印象深い作りになっている。

特に「Restoring the Light, Facing the Dark」は実際に遊んだ際の高難易度かつ神秘的な作りのシークエンスのうらで流れるBGMとして、遊んだ人間が耳に残った音楽として口をそろえて挙げるだろう。
筆者としてはこれに加えてエンディング曲である「Light of Nibel (feat. Aeralie Brighton)」も大変印象に残っている。
 
とにかく先に挙げた音楽収録風景のPV動画を見て欲しい。まず、これを見てなにか感じるものがあったらぜひ遊んで欲しいのだ。

メトロヴァニア形式な探索メインの2Dアクション

本作品はいわゆる「メトロヴァニア(メトロイドヴァニア)」よ呼ばれるジャンルの2Dで作られた、広がりのあるフィールドを探索しながら、謎をとき、敵を倒し、主人公を強化し、更に探索範囲を広げていくという流れの作品になっている。

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プレイヤーは序盤、何もスキルのない状態から始まりレベルアップからの能力強化やストーリーを進めるごとに重要なキー能力を手に入れ探索を進めていくわけだが、その際に手に入るスキルの「可能性の広がり方」が大変分かりやすく出来上がっており、手に入れた瞬間今まで泣く泣く見過ごしてた探索できなかった部分を思い出し、戻ることで探索範囲を広めることが可能なようになっている。
 
つまりできることが増えていくというメトロヴァニアの基本はシッカリとそして楽しく実装されているのだ。
 
また各ステージごとに特徴的なギミックが搭載されておりそれぞれ違った謎解きを楽しめるのも本作の特徴だ。ちなみに謎解きの難易度自体は「気づいたらサクサク進む」というゼルダ的な分かりやすさなので気軽に挑戦できることも付け加えておく。
 

優しくない、だがクリアしやすく調整された歯応えのある難易度

「綺麗な花には棘がある」という諺が存在する。本作はまさにその言葉が似合う出来となっており、美しいビジュアルとは裏腹に、苛烈な難易度のレベルデザインになっている。特に初期の主人公はほとんど攻撃手段を持っておらず、また体力も少ないためステージ内のギミックや敵の攻撃によって死んでしまう、何度も何度も何度も、数えきれないほどに。
 

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だが基本的に復活が瞬時に行われ後述のシステムと寄せて何度も挑戦しやすい作りとなっているし、攻撃方法も近距離でダメージ覚悟で殴りあうタイプでなくメトロイドコントラ的な「狙う射撃」攻撃でもなく、自動的に近くの敵に追尾するようなショット攻撃が基本となっており戦いやすいものとなっているので指先の繊細さを求めるような塩梅でないのが大変嬉しい。
 
ステージの難易度も「何をしたらいいかわからない」難しさではなく「何をすればいいかは分かるが、あと一歩足りない」という目先に人参をぶら下げられる作りとなっているため、絶妙に心が折れにくいように、もし仮に行き詰ったとしてもコントローラーを置いている間、ふと閃いて再挑戦したくなるような、そんな謎解きやステージデザインとなっている。
 
 
つまり何度も心置きなく死んで復活するためのお膳立てがゲーム側で備えられているので、程よく歯ごたえのある現代のゲームを遊びたいという人間に勧めることが出来るのだ。また先に上げたスキルシステムのおかげでいわゆるRPGめいたレベル上げも可能なため、そういったところで強くしてから挑戦するという楽しみ方も出来るのも大変大きい。
 

「セーブのしどころ」をゲームデザインに落とし込んだシステム

また本作で特徴的なシステムのひとつとして「ソウルリンク」というシステムがある、これは戦闘や探索や時間経過によって入手できる「エナジーセル」と呼ばれるいわゆるMPに近いものをためることで使用可能になるシステムだ。
 
これでなにができるかというと、その場での体力回復と同時に「セーブポイント」を作成することが出来るのである。もしその直後死んでも直近で作成したソウルリンクからリスポンすることが可能になるのだ。
 
しかし、このシステムがかなり曲者で「調子に乗って進み続けて不注意で死んでしまったときにセーブしてなかったことに気付いて絶望する」というRPGおなじみのあの感覚がゲームとして落とし込まれているのだ。おそらくアクションゲームになれている人ほどソウルリンク作成をついつい怠ってかなり前まで巻き戻ってしまうという悲劇に襲われるかもしれないので・・・備えよう。
 

「絵で語られる」ストーリーテリング

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ゲーム内のナレーションやキャラクタ同士の会話は必要最低限の序盤の説明や補足程度に抑えられ、ゲーム内の背景の移り変わりやギミック、キャラ同士の動きでストーリーを表現している。これが本作のラスボスとの関係性を上手く表現しており終盤のカタルシスは見事としか言いようが無い。
 
あからさまな泣かせ演出とか何かを訴えかけるとかそういう描写ではなく、ありのままの世界を表し、解釈は遊び手に委ねられる作りとなっているのも説教臭くなく、遊んでて心地よかった。
 

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欠点を上げるなら

そんな本作だが気になった点も無いわけではなく、例えば一部の探索や脱出シーケンスで収拾アイテムを取り逃すと再度取りなおすことが出来なかったりクリアしたらそれっきり、といった点が気になった。
また、描き込まれた背景にゲーム内のオブジェクトが溶け込んでしまって見づらくなってしまってる場面も少なからず存在したり、とそのせいでとあるチャプターでの謎解きが苦労してしまうという問題点が・・・
 
それと、蛇足ながら購入前に気になった点だが、初期PVの初見時の誤解持たれやすさはもう少しどうにかして欲しかったなぁと。
上に挙げたPVは初期に出たもののひとつだが、これだけ見ても 「黒いベイマックスが主人公で白い妖精っぽいキャラは謎解き特化の装備扱い的な感じで、ゆったり進む心温まる雰囲気重視横スクロール2Dパズルゲーム」に見えてしまう。実際は「ガチガチに歯応えのある死にまくりメトロヴァニア2Dアクションゲー」であるのに、だ。
まぁ細かい点だし実際に遊ぶ上では殆ど関係ないわけだが。
 
そこら辺は今後発売されるアップデート版で(DLCとしても配信されるよね?)期待したいところである。
 
 

動かせるハード持ってるなら買いましょう、そして遊びましょう。

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本作はSteamとXBOXONEにて配信されている。2Dアクションゲームだが描画周りのせいか要求スペック・ハードはそれなり以上だが、動く環境を持っているならマストなタイトルであるといえる。
 
良いグラフィック、良いBGM、良いレベルデザイン、良い操作性、そして良いストーリー。オリとくらやみの森にはそれが満遍なく備わっている。
 
今年のゲームアワードはベストアートディレクション賞に選ばれた本作、遊ばなければ損である。是非とも遊んでみてほしい。
 

作品情報

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■作品名:オリとくらやみの森 (Ori and the Blind Forest)
■発売日:2015年3月11日
■対応ハード:XBOXONE, Windows(Steam)
■ジャンル:探索型2Dアクション
■販売形式:ダウンロード専用
■開発元:Moon Studios
■発売元:Microsoft Studios
■リンク先: